手術や薬を使わない、新しい治療法
「FUS(MRガイド下集束超音波)治療※」が始まります。
※[FUS]は保険適用の新しい治療法です。
令和元年6月1日、「FUS(集束超音波)治療」が新たに保険適用となりました。
静岡県では、豊田えいせい病院が治療機器を初導入して「ふるえ外来」を開設し、ふるえ(本態性)に悩む患者様の治療にあたります。
手がふるえて文字がうまく書けない、お箸やコップをうまく持つことができない、声がふるえてうまく発声することができない……。
そんな症状にお悩みの方は、ぜひ「ふるえ外来」にご相談ください。
それは「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」かもしれません。
「本態性」は原因がわからないことを指し、「振戦」は自分の意志とは関係のない、規則性のあるふるえを意味します。65歳以上の5%~14%の方に症状が認められるといわれるように高齢者に多い症状ですが、若い方でも発症することがあり、家族歴もある病気です。
これまでの主な治療法「本態性振戦」は、現在でも根治させることのできない病気ですが、治療によって、その症状をある程度抑えることができます。これまでは、次の2つが代表的な治療方法でした。
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神経のたかぶりを抑える薬や筋の緊張を抑える薬を使って、症状をやわらげる。主に軽度・中等度の症状に適している。 |
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ふるえに関与する脳の部位を熱凝固電極を使って処置したり、脳刺激装置(ペースメーカーのようなもの)を埋め込んで症状を軽減する。 |
集束超音波治療とは、MRIで治療が必要な部位を測定した後、超音波を集中させることによって患部を熱凝固させ、ふるえの症状を軽減させる治療です。超音波は、ヘルメットに埋め込まれた1024個の素子で発生させるため、ひとつひとつは非常に微弱で、焦点となる治療部位までは皮膚や組織を傷つけずに到達することができます。そのため、薬もメスも使わず、頭の中のふるえの原因を処置することができるのです。
集束超音波治療の主な特徴
使うのはMRIの磁気と治療用の超音波だけなので、放射線による負担を与えません。
頭蓋骨への穿孔(せんこう:治療用に穴を空けること)や身体の手術がなく、体の負担が少ない治療法です。
MRIを使うことで、正確な部位と温度を常に確認しながら治療を行います。
麻酔を使わない治療なので、医師と対話して効果を確認しながら、超音波照射・効果判定を行えます。
※この治療法は現在の症状を軽減する治療法です。病気そのものの治癒を目指すものではありません。
診断から治療まで
専門医の問診により、ふるえが本態性振戦に起因するかどうかを診断します。
治療の数日前にCTスキャンを実施して、頭蓋骨の形状や厚さ、密度などを評価します。頭部のMRI撮影のため、剃毛、局所麻酔を行います。
術前および術中にMRI画像を撮り、治療プランを立て、標的を特定します。
準備として低エネルギーの超音波を照射して、MRI画像を確認しながら標的部位を正確に特定します。同時に中程度の超音波を当てて患者様の反応を伺い、合併症の併発などの可能性がないかを十分に評価します。
超音波を治療部位に集束させ、温度を高温(60℃以下)まで上昇させることで、標的組織を熱凝固させます。MRIでリアルタイムに確認しながら治療を行います。通常はふるえの強い側、両側の場合は利き手側のみに対して治療を行います。
術後は、MRIの強調画像を用いて治療効果を確認します。治療時間は一般的には3~4時間で、すぐに病棟に戻ることができます。術後短時間のうちに振戦症状の現象の確認が可能で、退院後は外来での診療となります。
【ふるえ外来】 祝日休診
担当医:杉山 憲嗣
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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午前 9:00~12:00 | - | - | ● | ● | ● | ● |
午後 2:00~5:00 | - | ● | ● | ● | ● | - |
【担当医のご紹介】
手術経験数: | 脳深部凝固手術 90例実施、DBS療法 170例実施 |
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専門領域: | 機能的脳神経外科(パーキンソン病による不随意運動、頑痛症、神経血管減圧術)、 モニタリング |
所属学会: | 2019年度 日本定位・機能神経外科学会 学会長 2019年度 ニューロモジュレーション学会 学会長 |
略 歴: | 1980年6月 秋田大学医学部卒業 2006年1月 浜松医科大学脳神経外科准教授 2019年1月 豊田えいせい病院非常勤 2020年 豊田えいせい病院 脳神経外科常勤 |